ことばの世界

本から自分を知っていく、そんな場所

本ことば064【あおい】西加奈子「辞書はなかなか面白い。」

【あおい】西加奈子

 

辞書はなかなか面白い。皆が知っている、当たり前のことをどう書いてあるのか見ると、ほほう、と思う。例えば「綺麗」は、見た目がはでで整っており、感じがいい様子。「匂い」は、そのものから漂ってきて、鼻に感じられるもの。「歩く」は、足を使って、他の場所へ移ること。

 

 

みんなの知っていることを

辞書が改めて説明してくれているのか。

 

それとも、

辞書で意味を知ったから

みんなが、その言葉の意味を

当たり前にと馴染んでいくのか。

 

 

 

ニワトリが先か、

タマゴが先か。

のような話だけども、

そんな風に思うのです。

 

 

 

よくよく考えてみると

辞書って不思議かも。

 

 

だって、

「言葉」を「言葉」で説明しているんだもん。

 

 

「言葉」で説明されている「その言葉」を

理解できないとしたら

「その言葉」を説明している

「そのその言葉」まで

追っていくことになるんだから。

 

 

って、

考え始めると

どこまでも、どこまでも

深く潜っていけるから

空気がすえなくなっちゃいそう。

 

 

んん。

でもでも。

 

きっとさ、

「言葉」を説明する

「その言葉」は

もっとわかりやすい言葉だから

深く潜るというよりも

出口に向かっていることになるのかな。

 

 

 

んーーーー

悩ましい。

 

 

簡単な言葉ほど

実は難しいような気もする

言葉のパラドックス

翻弄されるのでした。

 

 

 

あおい (小学館文庫)

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本ことば063【一年四組の窓から】あさのあつこ「どんなささいなことでも、迷ったり、悩んだりしたとき、杏里は自分の中の自分に問いかける。」

【一年四組の窓から】あさのあつこ

 

 

杏里はドアに手をかけた格好で、しばらく躊躇していた。

どうしよう・・・・・・。

このほこりと暑気の中に、入っていく?

自分に問いかけてみる。

いまさら何言ってんの。自分で決めたことでしょ。

少しつっけんどんな冷たい声が返ってくる。杏里自身の声だ。

どんなささいなことでも、迷ったり、悩んだりしたとき、杏里は自分の中の自分に問いかける。

ねえ、どうしたらいい?

すぐに答えが返ってくるときもあるし、何も聞こえないときもある。今は「しっかりしなさいよ」と背中を叩かれた気がした。

自分で決めたことでしょ。しっかりしなさいよ。

 

 

これ、自分との「対話」だよね?

 

 

「わたしはどうしたい?」

「わたしはどう感じてるの?」

 

どんなささいなことも、自分に聴いていくこと。

 

 

周りの意見に左右されない。

周りの言うことを鵜呑みにしない。

 

それを聴いて

「自分がどう感じるか?」を自分に問って

そこで自分が納得するならその意見を採用するし

そうでないなら採用しない。

 

 

すべては、自分が決めているんだ。ということ。

 

 

 

人生の全部が自分の選択で成り立っている。

 

 

だから、

どんなことでも自分と対話するの。

 

 

簡単なようで、

長年のクセって抜けなくて

 

とことん自分と「対話」するぞ!と

決意して習慣化するまでやらないと

いつの間にか世間の意見に流されていっちゃう。

 

誰かの言ったことをそのまま採用してしまう。

 

 

簡単に、

自分の人生の決断を何かに任せることになってしまう。

 

 

 

 

大きな決断の前には

小さな決断が何段も、何十段も積まれてる。

 

「この道は右に曲がる?左に曲がる?それとも真っすぐ?」

「今、何を食べたいの?」

「言われた言葉を聴いて、わたしはどう思ったの?」

「もう寝たいの?」

「何にそんなに怒ってるの?そもそも怒っているの?」

「今日はどの洋服を着たいの?」

 

 

ささいなこと。

自分に問いかけるの。

 

答えは自分の中にあるからね。

 

 

自分との「対話」は必要不可欠なものだ。

もちろん、人との「対話」もね。

 

 

一年四組の窓から (光文社文庫)

一年四組の窓から (光文社文庫)

 

 

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本ことば062【四月になれば彼女は】川村元気「年を重ねるにつれ、相手が隠している部分に惹かれるようになってきた。」

【四月になれば彼女は】川村元気

 

「・・・・・・彼女とは、好きなものを共有できていたと思うんです。楽しいこと、嬉しいこと、美しいと思うもの」

「同じものが好きだというだけで、運命を感じたり幸せだと思ったりしてたときが私にもあったな」

「でも自分でも気づかないうちにそれが反転してきたんです」

「反転?」

「はい。写真のネガフィルムみたいなものかもしれません。年を重ねるにつれ、相手が隠している部分に惹かれるようになってきた。そして隠している部分というのは、だいたいその人の弱い部分なんですよね」

 



好きなところが

一緒っていいよね。

 

そんな流れで

文章を書いていたのだけど、

やり直し!

 

 

それより

強く響いてくるのは

相手が隠している部分に

惹かれるようになってくる。

ということ。

 

 

隠してるつもりでも

隠しきれてないんだよ。

 

 

表からみたら

見えないかもしれないけど、

 

あなたの見えない

後ろからみたら

隠してる弱さも

お見通しだったりするんだよ。

 

 

 

その弱さが

魅力的になってしまうんだけどね。

 

 

 

隠してるところ。

隠そうとしているところ。

 

 

一緒に過ごす日々、

一生、隠されている

たくさんの要素を

見つけていくんだと思う。

 

 

違う一面を

知っていく歓び。

 

 

 

弱さも強さも

愛おしく思えるような

さらけ出していける、

そんな関係をずっと続けていきたいな。

 

 

四月になれば彼女は

四月になれば彼女は

 

 

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本ことば061【王国その1 アンドロメダ・ハイツ】よしもとばなな「やりたいと思ったときが、時間のある時なんだ」

【王国その1 アンドロメダ・ハイツ】よしもとばなな

 

「大丈夫だよ。やりたいと思ったときが、時間のある時なんだ。そういうのをしなくなったら、時間の奴隷になっちゃうよ。やりたいと思ったときに、ぱっと手を出さないと届かなくなることがあるんだ。・・・・・・それに、どうしてもわからないけれど、今、サボテンが俺と交流してもいいと思っている気がする。うちのリビングにいるところがさっと浮かんできたんだ。そういうときは不思議なもので、どんなに手間がかかっても自然にことが運ぶんだ。時間ってすごいよ。のびたり縮んだり、自由自在で・・・・・・。人間の心がすごいのかもしれないけど。そうやって、新しい試みが浮かんでくるとき、パズルが解けるようにいろいろなことがわかってくるとき、俺はなんとなく、生きているという感じがするんだ。雫石が山で星空を見上げていた時のように。」

 

 

ちょっかん。

 

直感?直観?

 

 

急に、パッと

空から何かが降ってくることがある。

 

 

「ん?どういうこと?」と思うんだけど

お告げにしか思えないような、

来た瞬間に手に入れないと!と思う何か。

 

 

降ってきた時点で

キャッチはできている。

 

後は、それを

採用できるかどうか。

 

 

すぐに採用しなかったら

つかむことのできない、何か。

 

 

今だ!っていう瞬間だから

降ってきているんだもん。

 

 

 

その時は

点で存在していて

意味がわからないことも多い。

 

 

何で?と思うのに

なんかやらなくちゃいけない気持ちになるから。

 

 

 

やってみて

後から振り返ると

点と点がつながっている。

 

 

 

急に行きたくなったカフェや

読まなくちゃ!と読みかけの本を横に置いて新しく読む本。

 

よくわからないまま参加したイベントや

いつもは歩かない道。

 

 

それが伏線となって

どこかに繋がっていってるんだ。

 

 

降ってきたものが

ゴールではなくて

 

ゴールへと連れて行ってくれる

ひとつのアイテム。

 

 

 

パッと浮かんできたことは

わたしは割と信じて動いてしまうけど

それが良い感じなんだな。

 

 

 

王国〈その1〉アンドロメダ・ハイツ (新潮文庫)

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本ことば060【人生の道しるべ】宮本輝 吉本ばなな「そう、嫌なものは嫌なままです」

【人生の道しるべ】宮本輝 吉本ばなな

 

 

そう、嫌なものは嫌なままです。本質的なものは、そう簡単には変わらないものなんやね。「三世変わらぬを性というなり」という言葉があって、過去世、現在世、未来世の三世にわたっても、性分は変わらないとの意味です。しかし、昔はすぐに逆上してカーッとなっていた男も、三十年経つと、怒りの向かう矛先を身近な人から世の中への間違いへと変える。性は同じでも、その人はいい方向へ変化したといえますよね。

 

 

『嫌なものは、嫌でいいんだよね。』

わたしを安心させるように、何度か心の中でつぶやいた。

 

嫌なものは、あってはいけないとか

無理な話だもん。

 

嫌なものは、嫌で

それが何でなのかを説明できるものもあるけれど

説明できないものが多くある。

 

『なんとなく嫌なの』

 

でも、それが

過去世からのものでその性分が変わらないからよ。って

自分を納得させることができたなら

それで理由は十分なのだと思った。

 

 

 

なんでも、好きにならなくちゃいけない価値観を

自分でつくりあげていたから

嫌いなものがあるのがツラかった。

 

いや、食べ物の好き嫌いは激しくて

納豆や梅干し、炭酸が嫌い。

そういった嫌いは主張できてた。

 

 

みんなが『好き』というものを

わたしが『嫌い』ということは

無意識に避けていた。

 

 

みんなが好きなものは

わたしも好きでないといけない

っていう、わけのわからない呪い。

 

 

 

でもね、

嫌いなものは嫌いでいいし、

それが個性なのだから

そのままでいいんだよね。

 

 

 

まぁ、

嫌いが急に好きになる時もあるから

それもまた、おもしろいんだけどさ。

 

人生の道しるべ

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