ことばの世界

本から自分を知っていく、そんな場所

本ことば086【ハゴロモ】よしもとばなな「毎日が新しい朝なんだ・・・・・・」

ハゴロモよしもとばなな

 

そう、気づくと私は朝のきれいな光に照らされて、連れてきた猫だけが、東京での生活のままにごはんをねだって顔をすり寄せてくる。ここはどこだ? と何回も思った。ふるさとなのに実家ではない場所で目覚めている。自分がどこで何をやっているのかさっぱりわからない。

その解放感に、涙がにじんだりしたこともあった。こんなふうに人生をやりなおせたらいいのに。毎日が新しい朝なんだ・・・・・・今まで一度も浴びたこともない光を今、浴びているんだ。これからなんでもできるし、どこにでも行けるんだ。

ところが立ち働いているとふと、記憶の重みがおそってきて、人生は思い出という名の牢獄だというところに連れもどされる。

 

 

 

都会の喧騒から離れて

自然の中に行きたくなることがある。

 

 

 

といっても

わたしの住んでる小田原は

ほどよく田舎なのだけど。

 

 

 

 

疲れているときは

人工的なものがある場所よりも

自然に包まれる場所にいたくなる。

 

 

 

太陽の光がポカポカと

心も身体も温めてくれて、

 

木々の緑と色鮮やかな花々が

色の美しさを魅せてくれて、

 

大地に裸足で立つことで

地球と繋がっていることを感じて、

 

風が運んでくれる香りに

ほっとするなつかしさを思い出して、

 

 

流れゆく景色が

いつも同じではないことを

ただただ感じていたくなる。

 

 

 

 

弱っているときは特に。

 

 

 

 

それだけ

自然は大きくて偉大なんだ。

 

 

 

 

 

でも、

よく見て感じると

都会でだって

毎日、新しい太陽を感じることができる。

 

 

要は、

自分がそれを感じることのできる

状態なのかどうか、がポイントなんだ。

 

 

 

 

今は

品川のカフェで

この文章を書いている。

 

 

外は雨。

 

 

窓から、

傘をさして歩く人たちが見える。

 

 

 

久しぶりの雨だった。

 

 

 

雨のしずくが

水たまりに落ちて

波紋がひろがっていくのが好き。

 

 

それは、

どこでだって見れる景色。

 

でも

一時として

同じ景色は得られない。

 

 

 

毎日が、

毎瞬が、

新しい自分になれる時なんだ。

 

 

変わっていないようで

わたしも常に変わっているんだと

思ったら、笑みがこぼれた。

 

 

ハゴロモ (新潮文庫)

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