言葉の世界

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【ツナグ】辻村深月「――御園。私に敵うと思ってるの?」

【ツナグ】辻村深月

 

酷い言葉はいくらでも浮かんだけど、いちばん言いたくて吞み込んだ言葉、喉まで出かかってかろうじて抑えた言葉は一つだった。

――御園。私に敵うと思ってるの?

 

 

 

あ、また胸が痛くなる。

 

自分が一番だと思うことは

悪いことじゃない。

 

それだけ自信があって

いいんだと思う。

 

 

部活をやっていたころのことを

何故だろう、急に思い出した。

 

 

吹奏楽部だった、中学時代。

 

 

 

それなりに演奏できた私は

井の中の蛙

自分に自信を持っていたと思う。

 

 

自分が上手いのは当然と

おごっている部分があった。

 

 

ああ、書いてて

自分の傷を掘り返してイヤになる。

 

 

けど、

イヤになるってことは

まだ、未解決の何かがあるってことだ。

 

 

そうだ。

 

 

自分はうまいとどこかで思いつつ、

ずっと謙遜をしていたんだ。

 

 

「わたしなんて、まだまだです」

「全然うまくないんです」

 

 

心での想いと

外に出すことのズレ。

 

 

内側は自信たっぷりなのに

自信ないようにふるまう。

 

 

もし、

自信たっぷりにしていて

出来ないところを指摘されでもしたら

すんごーく自分が傷つくから。

 

 

防衛策。

 

 

ダメなフリを演じて

結果、期待以上に上手かったら

褒められる可能性が増えるじゃない。

 

 

なんてあざといのでしょう。

 

 

そして、

人から褒められなくちゃ

生きていけなかったのかしら。

とすら思う。

 

 

 

できるのが当然だと

それを常に越えていかないと

褒めてもらえない。

 

 

できないが当然だと

ちょっとできるだけで

褒められる。

 

 

簡単に褒められるのが

うらやましくて

あえて、できないフリをしたこともあった。

 

 

自分に対して、失礼だったね。

 

 

なのに、

どこかプライドも高くて

練習は人一倍にやってたと思う。

 

 

できないのは悔しい。

だから、練習もする。

 

 

努力は努力でしていたんだ。

 

 

今のわたしが

中学生のわたしのところに行って

褒めてあげればいいんだね。

 

 

あの時のわたしが

言われたかった言葉を

届けてあげよう。

 

 

少し屈折してた、彼女へ。

 

 

人を下に見て

自分が一番とどこかで思いながらも

自信は人一倍なかった、彼女へ。

 

 

「あなたは、あなたの全力を尽くしてれば大丈夫だよ。

わたしは知ってるから、見てるから。

できるところは、堂々としてていい。

できないところは、きちんと認めて受け止めてね。

誰かと比べて、満足するんじゃなくて

自分との勝負だからね。

部活の中だけなんて、狭い世界だよ。

その中で満足するあなたではいないでね。

大丈夫、あなたは大丈夫!」

 

 

 

人を見下して

「わたしに敵うと思ってるの?」と思うよりも、

 

自分が自分に自信をもって

「わたしは一番だ!わたしに負けない」と

自分に向かって生きてるわたしでありたい。

 

 

といっても、

人と比べるからこそ

安心したり、

火がついたり

することもあるから

それも必要ではあるんだけどね。

 

 

両方をうまくつかっていくんだ。

 

 

 

ツナグ (新潮文庫)

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