ことばの世界

本から自分を知っていく、そんな場所

本ことば

本ことば084【神様のボート】江國香織「言葉で心に触られたと感じたら、」

【神様のボート】江國香織 「先生っていうものは、だいたい言葉の使い方が上手なんだから」 言葉は危険なのだとママは言う。言葉で心に触られたと感じたら、心の、それまで誰にも触られたことのない場所に触られたと感じてしまったら、それはもう「アウト」…

本ことば083【まく子】西加奈子「みんなで分かるからこそなおさら、その中の自分の「分かる」という気持ちを丁寧に慈しむことが出来た。」

【まく子】西加奈子 誰も、明らかに説明不足のぼくを責めなかった。ぼくたちは言いようのない共感の中にあった。それは言葉では追い付かないものだった。それぞれの想いを、それぞれで分け与えているような感覚は、でも、かえってそれぞれの体がひとつである…

本ことば082【きりこについて】西加奈子「 自分のしたいことを、叶えてあげるんは、自分しかおらん。」

【きりこについて】西加奈子 「あたしは、自分のおっぱいと、足が綺麗やと思うから、出してんの。それをなんで、襲ってくれ言うてるなんて、思われなあかんの?」 「でも・・・・・・、ほら、もうちょっと・・・・・・」 「何?あんたらみたいな服着れ言うて…

本ことば081【14歳の水平線】椰月美智子「なんで登場人物の気持ちをおれが当てなくちゃいけないっての」

【14歳の水平線】椰月美智子 「そもそもさ、国語の文章問題とかって、わけわかんなくね?なんで登場人物の気持ちをおれが当てなくちゃいけないっての。好き勝手に自由に読ませてほしいよ、まったく」 おれの言葉に、ミラクルが再度深くうなずく。国語の文…

本ことば080【アナザー・ワールド 王国 その4】よしもとばなな「私の心の奥底には小さなときからずっと同じように、たったひとりでうずくまる場所がある」

【アナザー・ワールド 王国 その4】よしもとばなな 私の心の奥底には小さなときからずっと同じように、たったひとりでうずくまる場所がある。そういうのをこの人も持っている、そういう人だった。 うずくまる場所。 わたしも、もっている。 海の底に潜って …

本ことば079【恋愛小説】椰月美智子「他人に相談したって、結局は自分が決断しなければならないことを知っているから」

【恋愛小説】椰月美智子 映子自身、自分の悩みを他人に相談するタイプではない。他人に相談したって、結局は自分が決断しなければならないことを知っているから。どちらかと言えば美緒も映子に近いものがある。 けれど! 天下の甘ったれの美緒は、とりあえず…

本ことば078【思いを伝えるということ】大宮エリー「輪だったものが途切れるところに、なんか面白みを感じるの」

【思いを伝えるということ】 大宮エリー 輪ではなくなったドーナツの穴を見つめながら、 「輪だったものが途切れるところに、なんか面白みを感じるの」 と、美和子が言った。西島は、なんとなく美和子の言わんとしている感覚的なことが、分かるような気がし…

本ことば077【神様のボート】江國香織「ある場所で浮かないこととある場所に馴染むことと全然別であるらしい。」

【神様のボート】江國香織 でも桃井先生にいわせると、ある場所で浮かないこととある場所に馴染むことと全然別であるらしい。 ――きみは馴染まないね。 先生によくそう言われた。浮かないけれど、馴染みもしない。それは悪いことではないけれど、ときとしてま…

本ことば076【ツナグ】辻村深月「みんなに平等に不平等。フェアなんて誰にとっても存在しない」

【ツナグ】 辻村深月 狐につつまれたような気分のまま返事をすると、「そ」と頷いた彼女が、去り際に微笑んだ。 「世の中が不公平なんて当たり前だよ。みんなに平等に不平等。フェアなんて誰にとっても存在しない」 平等に不平等。 平等なのに不平等? 平等…

本ことば075【ハーモニーの幸せ】田口ランディ「他人を思い通りにしたい私がいる」

【ハーモニーの幸せ】田口ランディ 他人を思い通りにしたい私がいる。自分のイメージの屋久島を相手に押し付けようとしている私だ。そして、怒られるとすぐにふてくされる私がいる。「だったら、もういい」と関係を切ることで物事を決着させてしまう友達。ど…

本ことば074【本当に自分の人生を生きることを考え始めた人たちへ】銀色夏生「自然にいろんなことがむくむくと育って、世界のかたちは変わっていくような気がします。」

【本当に自分の人生を生きることを考え始めた人たちへ】銀色夏生 話すこと、表現すること、それを聞くこと、見ること、それによって、自然にいろんなことがむくむくと育って、世界のかたちは変わっていくような気がします。 そして僕も、今までどおり、自分…

本ことば073【コーヒーが冷めないうちに】川口俊和「それは重力による影響だが、人の心にも重力のようなものがある」

【コーヒーが冷めないうちに】川口俊和 水は高い場所から低い場所へと流れていく。それは重力による影響だが、人の心にも重力のようなものがある。自分が認め、心を許した相手の前では嘘がつけない。本当の自分をさらけ出してしまう。悲しい気持ちや、弱い自…

本ことば072【ハゴロモ】よしもとばなな「相手をそこまで信じて尊重することなんかできないような気がした」

【ハゴロモ】よしもとばなな 私にそれができるだろうか・・・・・・、気持ちをうまく切り替えればなんとかできそうだけれど、相手をそこまで信じて尊重することなんかできないような気がした。社会の観念やこうあるべきという回復のしるしに、ついとらわれて…

本ことば071【きっと君は泣く】山本文緒「本当のことを言われて怒るようじゃ、まだ椿も子どもだよ」」

【きっと君は泣く】 山本文緒 「返す言葉がないようだね」 くすくす笑って、祖母は煙草をもみ消した。 「ひどーい、おばあちゃん」 「そう思うのは本当のことだからだろ。本当のことを言われて怒るようじゃ、まだ椿も子どもだよ」 図星のことを 言われたとき…

本ことば070【四月になれば彼女は】川村元気「そのときここにわたしがいて、感じていたなにかを残すためにシャッターを切ります」

【四月になれば彼女は】川村元気 「わたしは雨の匂いとか、街の熱気とか、悲しい音楽とか、嬉しそうな声とか、誰かを好きな気持ちとか、そういうものを撮りたい」 「確かに、写らないものだ」 「はい。でも確かにそこにあるものです。カメラを持って歩いてい…

本ことば069【なるほどの対話】河合隼雄・吉本ばなな「好き嫌いがないかと言えば、相当にはっきりと(特に嫌いということが)あります」

【なるほどの対話】 河合隼雄・吉本ばなな 何かにつけて、「これが好き」というのがあまりないのです。と言って、好き嫌いがないかと言えば、相当にはっきりと(特に嫌いということが)あります。しかし、それはたとえば、「~の花が嫌い」というのではなく…

本ことば068【きいろいゾウ】西加奈子「私たちはいつだって、大切なときは恥ずかしがりやになった」

【きいろいゾウ】西加奈子 私はグッナイベイビーの感想を、そしてありがとうを言いたいんだけど、恥ずかしくて言えない。私たちはいつだって、大切なときは恥ずかしがりやになった。誕生日、大好きだと思うとき。今日もそう。ムコさんにありがとうを言いたい…

本ことば067【男ともだち】千早茜「本当にそう思うなら、別れた新しい男を探せばいいのにと口にださずに思う」

【男ともだち】 千早茜 そもそも家を空けることに限らず、彰人に何かを強制されたりしたことはほとんどない。「結婚したらそうはいかないよ」と既婚者の友人たちからよく言われる。その後には必ずといっていいほど「優しくて理解のある彼氏がいていいね」と…

本ことば066【きりこについて】西加奈子「「自分」の欲求に、従うこと」

【きりこについて】 西加奈子 言い忘れたが、ちせちゃんときりこは、友達になった。 ふたりは約束した。 「自分」の欲求に、従うこと。思うように生きること。誰かに「おかしい」といわれても、「誰か」は「自分」ではないのだから、気にしないこと。 「自分…

本ことば065【十二歳】椰月美智子「何かになれる人はもうこの時点で、その何かに近づいているような気がするから。」

【十二歳】椰月美智子 「あーあ、よかったねえ。さえはいい子だから、なんにでもなれるさ」 そう言って、おばあちゃんはにっこりと笑った。 おばあちゃんは、昔から私に、「さえはなんにでもなれる」と、口ぐせのように言ってくれる。もちろん、私もなんにで…

本ことば064【あおい】西加奈子「辞書はなかなか面白い。」

【あおい】西加奈子 辞書はなかなか面白い。皆が知っている、当たり前のことをどう書いてあるのか見ると、ほほう、と思う。例えば「綺麗」は、見た目がはでで整っており、感じがいい様子。「匂い」は、そのものから漂ってきて、鼻に感じられるもの。「歩く」…

本ことば063【一年四組の窓から】あさのあつこ「どんなささいなことでも、迷ったり、悩んだりしたとき、杏里は自分の中の自分に問いかける。」

【一年四組の窓から】あさのあつこ 杏里はドアに手をかけた格好で、しばらく躊躇していた。 どうしよう・・・・・・。 このほこりと暑気の中に、入っていく? 自分に問いかけてみる。 いまさら何言ってんの。自分で決めたことでしょ。 少しつっけんどんな冷…

本ことば062【四月になれば彼女は】川村元気「年を重ねるにつれ、相手が隠している部分に惹かれるようになってきた。」

【四月になれば彼女は】川村元気 「・・・・・・彼女とは、好きなものを共有できていたと思うんです。楽しいこと、嬉しいこと、美しいと思うもの」 「同じものが好きだというだけで、運命を感じたり幸せだと思ったりしてたときが私にもあったな」 「でも自分…

本ことば061【王国その1 アンドロメダ・ハイツ】よしもとばなな「やりたいと思ったときが、時間のある時なんだ」

【王国その1 アンドロメダ・ハイツ】よしもとばなな 「大丈夫だよ。やりたいと思ったときが、時間のある時なんだ。そういうのをしなくなったら、時間の奴隷になっちゃうよ。やりたいと思ったときに、ぱっと手を出さないと届かなくなることがあるんだ。・・…

本ことば060【人生の道しるべ】宮本輝 吉本ばなな「そう、嫌なものは嫌なままです」

【人生の道しるべ】宮本輝 吉本ばなな そう、嫌なものは嫌なままです。本質的なものは、そう簡単には変わらないものなんやね。「三世変わらぬを性というなり」という言葉があって、過去世、現在世、未来世の三世にわたっても、性分は変わらないとの意味です…

本ことば059【異性】角田光代 穂村弘「遺伝子の段階で「孕む」「孕んだものと、離れる」の両方をいやというほど知っている」

【異性】角田光代 穂村弘 私には出産の経験がないが、しかし、自分ではないだれかを腹のなかで育て、世に送り出すというのは、想像を超えた何かであるとは思う。恋愛の絆を女性が求めるのは、それと関係しているのではないかな。つまり、私たちは産んだ産ん…

本ことば058【生きるとは、自分の物語をつくること】小川洋子 河合隼雄「自分の心の形に合うように、 その人なりに現実を物語化して 記憶にしていくという作業」

【生きるとは、自分の物語をつくること】小川洋子 河合隼雄 人は、生きていくうえで 難しい現実をどうやって受け入れていくか ということに直面した時に、 それをありのままの形では到底受け入れがたいので、 自分の心の形に合うように、 その人なりに現実を…

本ことば057【まく子】西加奈子「本当のことを言おうとするとき、ぼくはいつも話すのが下手になった。」

【まく子】西加奈子 これでは分かってもらえないだろうと思った。やっぱりぼくは、言葉が足りなすぎた。 最近のことだけではなかった。本当のことを言おうとするとき、ぼくはいつも話すのが下手になった。もどかしくて、ぼくは時々大声で叫びたくなった。そ…

【まとめ】本ことば

【本ことば】 まとめの目次 最終更新:2019.08.05 <あ行> あさのあつこ 【一年四組の窓から】 ・どんなささいなことでも、迷ったり、悩んだりしたとき、杏里は自分の中の自分に問いかける 甘糟りり子 【産む、産まない、産めない】 ・具体的な言葉を当ては…

本ことば056【ハゴロモ】よしもとばなな「同じような気持ちでそばにいるだけで、語り合う言葉がないほうがかえって通じ合える」

【ハゴロモ】よしもとばなな 「同じような気持ちでそばにいるだけで、語り合う言葉がないほうがかえって通じ合えるということのすばらしさを私はその歳にしてもう知っていたみたい。」 言葉がなくってもいい。 言葉がないほうが通じ合えることがある。 そば…