本ことば
【チエちゃんと私】よしもとばなな まわりの人にはずいぶんと妬まれたものだった。きっと親にお金があるからあんなふうにしていられる、とか、誰かの愛人なのだろう、とかあることないこといろいろ言われた。でも、そんなのではなく、私は好きなことしかしな…
【王国 その2 痛み、失われたものの影、そして魔法】よしもとばなな でも、この社会は山の上とは違うから、と私は思った。山の上では薬草茶を求めてわざわざたずねてきた人にしか会っていないから発言の権利があったが、ここではそうはいかない。ここではい…
【本当に自分の人生を生きることを考え始めた人たちへ】 銀色夏生 365日周期は地球が太陽の周りを回る一周と対応している自然のリズムですから、とても大事なものです。しかし、今のグレゴリア暦(西暦)では、毎日の日数が不規則なので、地球のリズムと…
【四月になれば彼女は】 川村元気 「わたしは雨の匂いとか、街の熱気とか、悲しい音楽とか、嬉しそうな声とか、誰かを好きな気持ちとか、そういうものを撮りたい」 「確かに、写らないものだ」 「はい。でも確かにそこにあるものです。カメラを持って歩いて…
【僕はがんを治した】福島正伸 でも、大切なのは私自身のあり方だろうと思った。私自身がどのように受け止めているか、私自身が前向きに受け止め、生きる意欲を今まで以上に高めることが。 病気を宣告されたときに、どう受け止めるのか。 事実は、事実だけど…
【ラリルレ論】野田洋次郎 あなたは、大丈夫だよ。 きっと大丈夫。 この言葉が今日は重たかった。 苦しかった。 ふたりから言われた。 励ましの言葉であったらろうに、俺が受け取ったものはそうじゃなかった。 あなたは大丈夫と言われると、頑張るしかないじ…
【いのちのエール 初女おかあさんから娘たちへ】田口ランディ ぬか床というのは、いろんな野菜を漬けると、 どんどんおいしくなるのね。 きゅうりはきゅうりのまま、 なすはなすのまま、 にんじんはにんじんのまま、 それぞれの野菜が、それぞれの野菜のまま…
【王国 その3 ひみつの花園】よしもとばなな 何かをつかもうという感じで来る人の方が、全てまかせきっている人よりもこちら側としてはやりやすいのだ。もちろん楓もそうだと思う。全てまかせきってなんとかしてください、という人の場合、一見開かれている…
【生きるとは、自分の物語をつくること】 小川洋子 河合隼雄 無限の直線は線分と1対1で対応するんですね。 部分は全体と等しくなる、これが無限の定義です。 だからこの線分の話が、僕は好きで、この話から、人間の心と体のことを言うんです。 線を引いて…
【ボールのようなことば。】糸井重里 学校て、生徒も先生もいっしょになってさ、 「わからない」の時間を、やらないかなぁ。 条件は、ひとつ、 「先生もほんとにわからないこと」をテーマにして、 しつこく授業を続けていく。 小学校は小学校なりに、中学校…
【蘇える変態】 星野源 犯罪以外で道を踏み外したと感じるおおかたのことは、踏み外したのではなく、自分が「真っすぐだと感じる道」と社会や環境が指し示す「真っすぐな道」がただ違うというだけだ。世間が「あんた曲がった考え方をしてるね」と言う時は大…
【蜷川実花になるまで】 蜷川実花 ただ、撮っている時は戦略的なことは一切考えません。撮っている瞬間は純粋に撮りたいから撮っているだけです。 撮影時は、どこまで不純物を排除し、イノセントになれるか。どれだけピュアな気持ちでシャッターが切れるか。…
【夏の森】銀色夏生 嫌いっていうほど好きじゃないって 言われて ようやくあきらめた 嫌いのベクトルがあると ひっくり返ったら その分だけ 好きになってくれるかも。 と、期待できる。 動く余地があると思える。 好きな人には 「好き」って伝えたいけど 嫌…
【人生の道しるべ】 宮本輝 吉本ばなな 吉本 たしかにその頃って、自分の実年齢より上の人の話を読むといいですよね。大人に憧れもできるし、生き方の多様性、可能性をそこで獲得できる。全く理解できない場合、理解したいという心のはたらきも生まれます。…
【サーカスナイト】よしもとばなな 「ねえ、聞いていいのか迷うときは聞いてみるね。あのさ、さやかさんのその左手が不自由なことと、そのご家族って関係があるの?」 迷うときは、聞いてみる。 できそうで、できないなぁ。 これ、言っちゃっていいのかな?…
【きいろいゾウ】 西加奈子 彼女は大切なことを何も言わない。内緒にしているのとも違う、ただ言わないのだ。(「だってムコさん聞かへんかったやん」とあとで言われるだけだ。)僕もあきらめて、なるべく驚かないようにしている。 やっぱり、ツマに共感して…
【生きるとは、自分の物語をつくること】小川洋子・河合隼雄 『それだけ言葉っていう道具の方が不自由なものだということでしょうか。 もう恐ろしいぐらいに出ます。言葉の方が一般的にはごまかし可能ですよ。相当嫌いな人にでも「お会いできて嬉しいです」…
【蘇る変態】星野源 人はみな、変態だと思います。 人間より長い歴史を持つ動物を生物として「普通」としたら、 服を着て着飾ったり、向かい合ってセックスすることを正常位とする人間は もうフェティッシュの固まりだし、みな変態です。 つまり「変態である…
【言葉なんかおぼえるんじゃなかった】 田村隆一(語り)・長薗安浩(文) たとえば、だ。 電話がここまで行き届くと、手紙を書かなくなる。手紙ってのは、思いを伝えるのに向いているんだ。まあ、そのためには言葉と字が大切になってくる。自分の思考や感情…
【ちび象ランディと星になった少年】坂本小百合 「すっげー、でもママはなんでゾウのことはそんなに詳しいの?」 「そうね。子供の頃から大好きだったからね。哲ちゃんだって、家にいるいろんな動物のことをよく知っているじゃない。好きなことって覚えるの…
【ブスの「力」】石川香 人の評価をぜんぶ足したら、それが私になるでしょうか?なりはしないですよね。だから、他人の評価なんて関係ないし、比較することを最初からあきらめる。そんなものは放棄すればいいだけなのです。 「人の評価=自分の評価」と 思い…
【いのちのエール 初女おかあさんから娘たちへ】田口ランディ 初女さんの、ことばへのこだわりは深い。ことばに、思いをこめている。ただ、ことばを道具のように使うのではなく、ことばを通してことばを超えた実感、フィーリング、雰囲気を伝えようとしてい…
【活版印刷三日月堂 星たちの栞】ほしおさなえ でもほんとは、ひとつに決めてしまうのが怖かったのかもしれない。ひとつに決めるということは、他の名前を捨てる、ということだ。ほかの可能性を捨て、ひとつの運命を選び取る。それが怖かった。 あれも、これ…
【異性】 角田光代 穂村弘 否、というのが私の結論だ。 男の人にとって「モノはモノ」であるが、 女性にとって「モノはワタシ」なのではないか。 その「モノ=ワタシ」は、アイデンティティとは似て非なる何かのように思う。 この図式の=は、単純にいえば「…
【ふたつめのボールのようなことば】糸井重里 同じようなことを思ったとしても、 その同じようなことを、 もういちど、あらためて書いたほうがいい。 この【ことば】に触れたから また、書いてみている 5年前の日記を読み返しても 今と同じようなことを 書…
【かもめ食堂】 群ようこ 「父のオムツを換えているとき、テレビでフィンランドのニュースを何度も見たんですよ。『エアーギター選手権』『嫁背負い競争』『サウナ我慢大会』『携帯電話投げ競争』でしたね。いちばんすごかったのは、『嫁背負い競争』です。…
【ラリルレ論】野田洋次郎 いつだって誰かの必死な姿は、 どこかの誰かにとっては格好の笑いものだ。 笑われるっていうのは、 それだけ無茶なことに挑んでるということだ。 それだけまっすぐだということだ。 それを直視できないんだ、笑う者は。 思わず眼を…
【和菓子のアン】坂木司 ずっとずっと昔から、時間は途切れなく続いている。その時間の別名を、歴史という。だとすると、いつか私だって自動的に歴史の一部になる。本には残らない名もなき人生だとは思うけど、食べることでお菓子を次の世代へ残していけたら…
【ハゴロモ】よしもとばなな そう、気づくと私は朝のきれいな光に照らされて、連れてきた猫だけが、東京での生活のままにごはんをねだって顔をすり寄せてくる。ここはどこだ? と何回も思った。ふるさとなのに実家ではない場所で目覚めている。自分がどこで…
【キュア】田口ランディ 僕は死ぬ運命なのか。嘘をつけ。どんな人間だろうと、必ず死ぬじゃないか。 身体が燃える。熱い。灼熱地獄だ。そのうえ寒けがする。熱を出しているのは細胞の中にいるミトコンドリアだ。遥か昔に寄生したウィルスが、六十兆の細胞の…