言葉の世界

言葉から、世界を知り、世界を創っていくブログ

本ことば

【ふくわらい】西加奈子「定の体は、絶対にそこにあって、それは、定の体以外の、何ものでもないのだ」

【ふくわらい】 西加奈子 定は、まず、暗闇の中で、自分の手を見てみる。見えないはずなのに、見えるような気がする。何故なら、そこに手は「ある」からだ。定はしばらく、自分の体の気配を感じる。真っ暗闇の中、動かずにじっとしていると、体の輪郭が溶け…

【よろこびの歌】宮下奈緒「歌う楽しさなんて、私は知っていたのだろうか?」

【よろこびの歌】 宮下奈緒 多くを望まないつもりで、実際にはとても多くを望んでしまっていたことに私はすぐに気がついた。うまくなくてもいいから歌う楽しさを知ってほしいと、たぶん私は思っていた。たぶん、というのは、そのときの率直な気持ちを正確に…

【アムリタ】吉本ばなな「その考えを吐き出すのは、お話を作ることしかないって思った」

【アムリタ】吉本ばなな 「夢に神様みたいなてかてか光った人が出てきて、何かを言ったんだ。そうしたら何かが変わっちゃって、頭の中が止まらないんだ。人間は、毎日ご飯を食べて、うんこやおしっこをして、毛が伸びて、ほんとは絶対にとどまれなくて、今に…

【ⅰ(アイ)】西加奈子「「みんな同じ」という「  」の中にみんなで入れられているようなものだった。」

【ⅰ(アイ)】西加奈子 日本の学校は属すということにかけては、これ以上なく適した場所だった。 アイの入学した私立の中学は同じ制服があり、同じ体操着があり、同じ給食があった。 「みんな同じ」という「 」の中にみんなで入れられているようなものだった…

【まく子】西加奈子「みんな「話すこと」を欲しがるモンスターみたいだった」

【まく子】 西加奈子 噂話はそこら中にあったけれど、大抵はみんなの暇つぶしの種にしか過ぎなかった。話すことが特別ないから、じゃあ誰かの噂話でもしましょうか。そんな感じだったし、その話の真相を本人に直接聞くこともしなかった。みんな「本当のこと…

【あと少し、もう少し】瀬尾まいこ「誰にも踏み込まれたくない。俺の中を知られたくない。」

【あと少し、もう少し】 瀬尾まいこ 「しつこく誘われるのは面倒だし、もしかしたら走ることも何か意味があるのかなって。まあ、そんな感じで来たんだ」 誰にも踏み込まれたくない。俺の中を知られたくない。ただそれだけの理由でここに来た。ばかばかしいけ…

【王国 その2】よしもとばなな「出し惜しみすると、かえって減っていくから。」

【王国 その2 痛み、失われたものの影、そして魔法】よしもとばなな 「雫石は、自分の持っているものは、これまでの山奥での変わった暮らしだけだと思っているけど、そんなことはないよ。君は君でいるだけで充分いろいろ起きると思うから、もうどんどん手放…

【夏の森】銀色夏生「孤独で 細くとがって 人に理解されにくい」

【夏の森】 銀色夏生 私がほんとうに言いたいことは何だろう 今 言いたいことは 孤独で 細くとがって 人に理解されにくい やさしく ひんやりした 透明な何か 理解されにくい。 理解されたい気もするし、 簡単に、理解されたくない気もする。 繊細なわたしの…

【光の帝国 常野物語】恩田陸「そうすれば、あんたの背中には草は生えない。」

【光の帝国 常野物語】 恩田陸 「毎日を大事に暮らすことさね。しっかり目を開けて、耳も掃除して、目の前の隅っこで起きていることを見逃さないことだね。そうすれば、あんたの背中には草は生えない。草の生えない人間が、世界に生えた草を取ってくれる」 …

【ラリルレ論】野田洋次郎「合わないとこは合わないんだよ。 許すしかないんだよ」

【ラリルレ論】 野田洋次郎 「合わないとこは合わないんだよ。 許すしかないんだよ」 こんな言葉をかけられた。ほんとそうだ。 これがわかってれば、きっと大丈夫なのに。 僕らはどれだけ相手に、期待して生きてるんだろう。誰かにわかってほしいんだろう。 …

【つるかめ助産院】小川糸「先生の口から当たり前のように語られる自由な発想がうらやましかった」

【つるかめ助産院】 小川糸 先生の口から当たり前のように語られる自由な発想がうらやましかった。そして、自分の先生のようにたくましくなりたい、と強く思った。今までずっとしがみついて生きてきた私のこだわりなんて、先生の言葉の前では、軽く吹っ飛ん…

【地球に生きる私たちにできること】ムラキテルミ 木村秋則

【地球に生きる私たちにできること】 ムラキテルミ 木村秋則 読んだり、読みたかった本を、人様に見られるのって、裸を見られるより恥ずかしいかも・・・・・・と、聖書と広辞苑を残し、処分しました。 本の好みって、 その人を表してくれるよね。 人の本棚…

【きいろいゾウ】西加奈子「そんな美しい言葉が、当たり前で、ありふれていて、」

【きいろいゾウ】 西加奈子 「彼は言いました。あなたの夫は、言いました。私は妻を愛している、と。そんな美しい言葉が、当たり前で、ありふれていて、そしてかけねのない言葉がこの世にあることを僕は忘れていたような気がします。それは水道の水のように…

【チエちゃんと私】よしもとばなな「誰かを必要として、その人なしでは生きられなくなるのがこわかったから」

【チエちゃんと私】 よしもとばなな こういうふうになるのがいやだったから、誰かを必要として、その人なしでは生きられなくなるのがこわかったから、私はずっとひとりでいたんだなと思った。何かを決めるというのは大人のすることで、私はまだ大人になって…

【四月になれば彼女は】川村元気「好きになれるものの総量が」

【四月になれば彼女は】 川村元気 「でも、好きになれるものの総量があらかじめ決まっている人は、無限に好きなものが増えていく人より幸せかもしれない」 なに? その意味深な一言。 無性に気になる、 でも、意味がわからない、 よくわからない わかれない…

【男ともだち】千早茜「お前がそう感じるんなら、誰に否定されたってそれが真実や」

【男ともだち】千早茜 「ええんちゃう。お前がそう感じるんなら、誰に否定されたってそれが真実や」 「ありがとう」 その言葉が自然にこぼれた。私はきっと好き勝手にしか生きれないだろう。強欲で傲慢で一人よがりで。そういう人間だ。それでも、その言葉が…

【食堂かたつむり】小川糸「振り返れば、奇跡のようにかけがえのない毎日だった」

【食堂かたつむり】 小川糸 あの頃は、別れと出会いが一気に津波のようにおとずれて、体力的にも精神的にも一日を生き抜くだけで精一杯だったけれど、振り返れば、奇跡のようにかけがえのない毎日だった。 渦中は気づかない。 激しい渦にのみ込まれて 息をす…

【ツナグ】辻村深月「――御園。私に敵うと思ってるの?」

【ツナグ】辻村深月 酷い言葉はいくらでも浮かんだけど、いちばん言いたくて吞み込んだ言葉、喉まで出かかってかろうじて抑えた言葉は一つだった。 ――御園。私に敵うと思ってるの? あ、また胸が痛くなる。 自分が一番だと思うことは 悪いことじゃない。 そ…

【ふたつめのボールのようなことば】糸井重里「こころの面倒を、引き受けないと、いけないんだ。」

【ふたつめのボールのようなことば】 糸井重里 こころなんてものがあるから、めんどくさい。 みんなが、それで苦しんでじたばたしているのだが、 どこかにすかっとしたくても、割り切っちゃだめだ。 こころの面倒を、引き受けないと、いけないんだ。 人間で…

【キュア】田口ランディ「そのために自分を透明にしなければならない」

【キュア】田口ランディ 星野の周波数に合わせる。そのために自分を透明にしなければならない。狙いを定めて電圧を上げた。そうだ、この感じだ。あの震えがやってくる。ブレる。次第に星野の震えと同調していく。僕は消える。どこにもいなくなる。 自分を透…

【ラリルレ論】野田洋次郎「不確かなものにつける理由なんて大体いくらでも出てくる」

【ラリルレ論】野田洋次郎 不確かなものにつける理由なんて大体いくらでも出てくる。 心配性だから、とか。まじめだから、とか。 基本『今』をいつもどこかで『過去』として認識してるからか、とも思った。 あと、なにより記憶で人は生きてると思ってる。 も…

【うつくしい人】西加奈子「私は誰かの美しい人だ。私が誰かを、美しいと思っている限り。」

【うつくしい人】西加奈子 「まきさんも、とても美しい人なのです」 泣かないぞ、と決めて、私は手を振った。ぶう、とバスが通る音がした。 私は誰かの美しい人だ。私が誰かを、美しいと思っている限り。 世界のすべてが 美しく見えるときがある。 残念なが…

【もしも私が、そこにいるならば】片山恭一「わたしという人間が弱すぎたんだ」

【もしも私が、そこにいるならば】片山恭一 「母のせいですね」 しばらく間を置いて内藤は口を開いた。 「当時はそう考えたが、結局は自分の人生だ。誰かのせいにできることなんてありはしない。うまくいかないのは自分のせい。わたしという人間が弱すぎたん…

【ふたつめのボールのようなことば】糸井重里「こころの面倒を、引き受けないと、いけないんだ。」

【ふたつめのボールのようなことば】糸井重里 こころなんてものがあるから、めんどくさい。 みんなが、それで苦しんでじたばたしているのだが、 どこかにすかっとしたくても、割り切っちゃだめだ。 こころの面倒を、引き受けないと、いけないんだ。 人間であ…

【いのちのエール 初女おかあさんから娘たちへ】田口ランディ「感謝するために感謝していなかったかしら。」

【いのちのエール 初女おかあさんから娘たちへ】田口ランディ プレゼントをもらった瞬間から「感謝しなければいけない」という気持ちに気が急いていて、感謝するために感謝していなかったかしら。 初女さんに、おむすびをむすんでいただいたときも「ありがと…

【食堂かたつむり】小川糸「みんな、濁り具合の程度の差こそあれ、心の中を満たしているのは泥水だ。」

【食堂かたつむり】小川糸 私はほとんどの人や生き物を愛することができる。けれどたったひとり、おかんだけは、どうしても、心から好きにはなれなかった。おかんをうとましく思う気持ちは、その他すべてを愛するエネルギーと同じくらい、深くて重たいものだ…

【ハーモニーの幸せ】田口ランディ「発見って、いま、この瞬間の喜びだ。」

【ハーモニーの幸せ】田口ランディ しょせん私が考えることなんて、かつて誰かがちゃんと考えたことばかりだ。 私には新しいことを見つけ出すような能力はない。 だけど、私にとっては発見なのだ。 あらゆることは世界にある。それを自分なりに発見すること…

【ふくわらい】西加奈子 「言葉を、言葉からお考えなのではないでしょうか。」

【ふくわらい】西加奈子 「言葉を、言葉からお考えなのではないでしょうか。」 「言葉を、言葉から?」 「はい、文章を書くときに言葉を組み合わすのではなく、言葉以前から始められているのではないでしょうか。」 言葉を考えるときは どこから考えてるの?…

【言葉なんかおぼえるんじゃなかった】田村隆一「肉眼だけが詩を詠むことができる」

【言葉なんかおぼえるんじゃなかった】田村隆一(語り)・長薗安浩(文) 旅の魅力は、未知なるものと遭遇することにある。 知らない土地、風景、顔、言葉、花、そして自分自身。遭遇しながら、自分の肉眼を養っていく。「私は、一・五です」なんでのとは違…

【四月になれば彼女は】川村元気「些細な気持ちを積み重ね、重ね合わせていくことを怠った」

【四月になれば彼女は】川村元気 私たちは愛することをさぼった。面倒くさがった。 些細な気持ちを積み重ね、重ね合わせていくことを怠った。 このまま、私たちが一緒にいることはできない。 私は失ったものを、取り戻したいと思っています。 たとえそれが、…